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彼岸の午後

孫が久しぶりに訪ねてきた
仏壇に線香を手向けると すぐ
スマフォに両目を埋めこみはじめた

なにもしゃべらない
なにも食べない
なにも…

あ 孫がいない
スマフォだけが テーブルの上に坐っている
その大きな口を思いきり開けて

たなびく線香の煙になって
空白の時が なにごともなく流れている

傲慢だけが

赤字まみれの家が激しく燃えている
燃えきれない一家が
債務を抱えたまゝころげ出てきた

消火のさなか
太った熱帯魚たちが
われ勝ちに 水草の株をついばんでいる

荒涼が吹き抜ける路地裏
悲嘆でずぶ濡れのその一家が
当てもなく さ迷っている と

おい こら 
生存許可証を提示せよ

腹を満たせば 無銭罪 
個人的自衛権を行使すれば 妨害罪
ふて寝をすれば 浮浪罪

たどり着いた収容所
朝から行き倒れの搬入がつづく
夜は夜で 歯ぎしりの大合唱

個人と個人 国家と国家の間でも
ますます拡がる隔たりに
傲慢だけが棲みついて

おい こら
生存許可証を提示せよ

悲憤の燃え殻が 
いたるところで くすぶっている



あすの運勢

運勢が「吉」と出たので
久しぶりにいいことに出会える
はずだったが

雲の波間に飛行船がたゆたっている
まばたきする と
轟音をあげて 軍用機が堕ちてきた
オスプレイだ
急いで 救援を!
なぜか 他国の障壁で救助できなかった

轟音 あっちでも こっちでも

みんな楽しげな 海水浴場
まばたきする と
病んだイルカの大群がいた
追加の荷駄を背負わされて 
なぎさに打ち上げられている
急いで 救援を!

まず 有識者会議を立ち上げ
それから 慎重に 
慎重に審議することとなった

あれも これも
これも あれも
すりかえ はぐらかし さきおくり

屈託なく のたまう増長天
あすこそ「大吉」
アンダー・コントロール 
あさっても 「大吉」…

わが街

向こうから美人(らしい)がやってきた
つい目を伏せる
と 足元に千円札が落ちていた
思わず またいでしまった

嘘をつくな というが
いつもの気弱の 
その 後始末に追われて生きているんだ

だれかの声が だれかを呼び止めている
だれも立ち止まらない
声を荒げて何度も呼び止めている
それでも だれも振り返えらない
と いきなり駅員が暴力を振るった
善良なこのぼくにだ

悪いのはそっちだ
ポンと触れるだけで改札を出入りできるなんて
だれでもそうしたくなるじゃないか

手配に追われて
地下にもぐった男が
いま 地上百メートルの現場から
この街をしげしげと見下ろしている
些事がまだらに起こる ありきたりなこの街を

テーマ :
ジャンル : 小説・文学

苦い晩餐

このビフテキは亡き母の味がする
愛娘を生んだあと
みずから逝った母

一斉に飛び立った森のカラスたち
訃報を咥えてどこへ行った

あなたは どこをどう流浪して
献立に戻ったのか
フォークが折れる

漬物桶から重石を下ろしたとたん
母の苦悩の香りが
孤独の島々へと拡がっていく

あなたの笑顔が美しすぎたから
傷心の奥地まで辿れなかった
あゝ 今となっては

今となっては
妹よ
おれたち
秘めやかな咀嚼をつづけよう
母の語りつくせぬ悔恨と
おれたちの多少の恨み言が
仲良く混ざり合うまで

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ジャンル : 小説・文学

プロフィール

toruta

Author:toruta
・1934(昭和9年)8月 東京生まれ
・1992(平成4年)3月 詩集「仮面中毒」上梓
◇詩空間は「青年」の発信広場。すこし齢を重ねましたが、私の「青年」はいま真っ盛りです。
◇私は敗戦後70年を遍歴した者として、身近にこぼれた諸現象を、腰を屈めてたぐっていきたいと考えています。

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