林檎の正体

ベットに林檎が堕ちてきた
紅を塗りたくりながら
誰でもいいから わたしを齧ってちょうだい

こんな幸運
ほんとうによいのだろうか

おなたの厚着がもどかしい
ぼくのせっかちが もっともどかしい
齧るって難しい

朝になって林檎がいない
ベットに 接吻があわただしく置かれている
林檎に齧られた受難者がいた

窓を開くと 曇天
鳶(とび)が一匹
空高く 輪を描いて飛んでいた

 [らくがき] 檸檬(レモン)だったらよかった かも

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ジャンル : 小説・文学

蛇問答

おれを蛇と間違えるとは
お前こそ蛇じゃないのか

くねくねとのたうって
とめどなく 悔恨を垂れ流すお前
蛇口を閉じてやる
すると 一晩中だ
お前のしずくで恐怖の桶が溢れる

夢でびっしり塗りこめたこの夜を
食い散らかしたお前は だれだ

今日は晴ればれしい日
灼熱の子宮を咥えて
お前は おれの股間にやってきた
ああ 愛が
すくすくと育っていく
おれは妊娠したのだ

神をもだますお前は だれだ

悔恨にのたうって
おれの洞窟にひそむお前
おれを蛇と間違えるとは
やはり お前こそ蛇じゃないのか

【らくがき】蛇に呑みこまれた。先客にスサノオ神がいた

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ジャンル : 小説・文学

百年目

もう帰りましょう
最後のメッセージを交わしたあと
吹きすさぶ砂塵のなか
あなたはどこへ行ったのか

あれから百年
声を限りに
熱気球を飛ばしつづけた日々
奈落の底に喉ごと落ちてしまった

あな と思ったら
あなたが と思ったら
あなたがいた と思ったら
それは 気だるげにうずくまる黒猫

教会の尖塔に止まって
疲れ果てた身体を干していると
あなたはくっきりと そこに
すり減った石畳を時雨で濡らして

もう帰りましょう
百年目の声であなた
停まってくれないタクシーを追いかけて
月明かりの墓地に着いた

本日
月面に降り立ち
つゆ草の花でたがいの白髪を染めて
また 旅に出る
まだ見ぬ本籍地へと

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ジャンル : 小説・文学

最後の最後

女が匂うと
つい港町に潜りたくなり
やっと辿りついた女と
べったりと寝て
別れる
別れるその前に 最後のもう一回
追加して
孤独の渚に打ち上げられる

これで最後
おぼろげに心に決めて
別れのグラスをぐいと呑み干し
年増にからんで
前歯をへし折られる

これがほんとの最後
ピンピンの紙幣が一枚
小便かけて邪険に捨てる
捨てないで やっぱ
女を拾う

これこそ最後 と言って
彼 溺死してみる

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ジャンル : 小説・文学

プロフィール

toruta

Author:toruta
・1934(昭和9年)8月 東京生まれ
・1992(平成4年)3月 詩集「仮面中毒」上梓
◇詩空間は「青年」の発信広場。すこし齢を重ねましたが、私の「青年」はいま真っ盛りです。
◇私は敗戦後70年を遍歴した者として、身近にこぼれた諸現象を、腰を屈めてたぐっていきたいと考えています。

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