黒衣の者


誰だろう
幾千の兵を無為に死なせた
あの 幾つもの惨憺たる「全滅」を
美しい「玉砕」と言いつくろった奴は

誰だろう
巨万の民と財を消耗しつくした
あの みじめな「敗戦」を
負けを意味しない「終戦」と言い換えた奴は

誰だろう
史上最悪の犯罪で壊滅した地を
「平和」を記念する公園に豹変させて
凄惨な過去を希釈してしまった奴は

「安らかに眠ってください
過ちは繰り返しませぬから」
と 無銘の文言を石碑に刻ませた奴は
誰だろう

「武器」を「防衛装備」へ
「輸出」を「移転」とすり替えて
人の殺し合いを
平然と 儲けのタネに仕立てた奴は
誰だろう

相変わらず 
「平和」とか「安全」とか
懐の深い言葉をまぶして 
ぼやかして
本音を力ずくで押し通した奴は
誰だろう

後始末


汚染水 海へ
汚染土 裏庭へ
大気汚染 風まかせ
住民 バラバラに
   *
あれだけの大災害
二度とあるわけないよ ないよう
明日の安全よりも 何よりも
今日の経済だよ だよう
   *
町ぐるみの避難
ようやく ようやく解除
帰ったら 「町」はなかった
   *
耕せる土地なし 雇用なし
医者なし 商店なし
若者も なし
転げた墓石 あり多数 
   *
学校の和式便所はイヤ
娘 我慢ガマンで 家へ駆け込んだが
大人たち
トイレのないマンションの設計に夢中
   *
核廃棄物は
地中深く ふかく 深く
十万年間 二十万年間…
どうぞ どうぞ
地上にはもう ヒトは居ないから 

覚悟せよ


紙幣で地球をぐるりと巻いて
刻々と締めつけていく
世界一の借金国

この国で生存する限り
誰でも
毎日 生存税を納めねばならない
いくら税率をかさ上げされてもだ

いよいよ
めでたく生存を終了するときは
誰でも
死亡税を払わねばならない
いくら目玉が飛び出るほどであってもだ
一回かぎりだから

払えない?
払いたくない?

それでも よろしい
その代わり 死なせてあげない
永遠に
永遠に累増する税からの
締めつけから逃れられない

覚悟せよ

越境者


垣根をくぐって
隣のネコが
うちの庭を
専用トイレにしていやがる

もともと垣根は
まっさらな白地図に
人間が 
先を争ってラインを引いたもの
それを 縮めろ伸ばせ
で 有事を頻発させてきた

いまでも 垣根を越えて
家人を水鉄砲で追い回したり
垣根の内側に
さらにロープを張って
プロレスゴッコをしたりして

あっ
ネコがまた 平然と垣根を侵してきた
空高く 雁行が悠々と垣根を侵している

重罪である

鳥の巣


豪華な調度に囲まれて
賑わう一家団欒の宴

あゝ この幸せのひとときを
どれほど夢見たことだろう
おれも ようやく一城のあるじ
一人前の男になったのだ

地球人が 勝手に
火星に火星人を住まわせた
ように
華美で豊満な生活こそ
豊かで幸せな人生 と
地球人が 勝手に
自分の脳に棲みつかせてしまった

薄暗い空き部屋を覗くと
強欲パーティの青鬼たちが
人々の通帳を 
黙々と齧っている  

空き家が目立つ大都会
帰る巣を見失った鳥たちの
失望と悔悟が
冷え冷えとした家並の上を
懸命に旋回している

不便を便利 にして
便利を便利 として
心地よく住める
人それぞれに ふさわしい
鳥の巣を探しながら

 
プロフィール

toruta

Author:toruta
・1934(昭和9年)8月 東京生まれ
・1992(平成4年)3月 詩集「仮面中毒」上梓
◇詩空間は「青年」の発信広場。すこし齢を重ねましたが、私の「青年」はいま真っ盛りです。
◇私は敗戦後70年を遍歴した者として、身近にこぼれた諸現象を、腰を屈めてたぐっていきたいと考えています。

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