棲み家


古い住宅街
空き家が あち こち
朽ちた屋根に
雑草が根を張っている

元の住民一家
わが家の屋根に
根を張って

あっ 流れ星だぁ と末娘
ひとつ また一つ
さっと走って さっと消えた

今夜も
はるか
はるかに遠い 遠い
ふるさとを目指す人たちが 

雲 流れて


ゆるやかに
里の暮らしを見下ろして
ゆったり
ゆったりと思索しながら
むかしの雲は
散歩を楽しんでいた

時々刻々
はるかなる宇宙から
つぶさに
つぶさに査察されて
いまの雲は
気配りしながら浮いている

見あげたら
わずかに見える空のもと
いつも
いつでもカメラに見張られて
街路を流れる人々は
自分の居場所を尋ねている

マスク族


雑菌とも
スモッグとも
人間とも
関わりを拒んで
みんな どこへ?

口をつぐみ
鼻をつまみ
両手を隠して
目だけをぎらつかせ

どこへ?
脇目もふらずに 行進していく

動物愛護


あらゆる動物の淘汰が進んでいる
その最大の天敵が人間だ
人間ばかりが増殖を重ねて
人間が 人間の天敵になってしまった

目を覆う殺戮のすさまじさ

生き残りの動物たちが
草葉の陰から これを見かねて
恐る恐る
神に申し出た
急を要します 
ぜひ 人間愛護法の制定を と 

へいわ


あの町にも この村にも
平和公園 平和商店街
平和通り 平和商事…
海外派兵にまで転用されて

もう いい加減にしてよ
音声だけの「へいわ」

哀れ 
せっかく
膨大な犠牲を払って
訪れてくれた平和が
本意を剥がされ 失意を抱えて
はるかなる故郷へ旅立とうとしている
プロフィール

toruta

Author:toruta
・1934(昭和9年)8月 東京生まれ
・1992(平成4年)3月 詩集「仮面中毒」上梓
◇詩空間は「青年」の発信広場。すこし齢を重ねましたが、私の「青年」はいま真っ盛りです。
◇私は敗戦後70年を遍歴した者として、身近にこぼれた諸現象を、腰を屈めてたぐっていきたいと考えています。

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