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残像

忘却に蝕(むしば)まれていないだろうか
鮮度を失っていないだろうか
遠い記憶

少年期の草原があった
希望が咲き乱れた憩いの場所だった
槌音が響きわたって
高層ビルの新都市になった

緑豊かな森に出あった
小動物たちとキノコの採取に没頭していた
が 部落どうしの諍(いさか)い
地中のミミズになったぼくは 時間の塊を徒食して暮らした

彼女ができた
たがいに盲目となって 愛し合った群青色のひととき
眼を開ける と
幸福の島々がぶつかり合い 
泡になって沖合いへと消えていった

孤独なクジラになった
物悲しく潮を吹き上げながら 大海原を泳いでいた

どこか どこかへ
どこか違うどこかへ
扉を探して さ迷った日々だった

遠い記憶
手を伸ばすと ためらいながら現われる
引っこめると そっけなく消える
遠のいてゆく残像
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プロフィール

toruta

Author:toruta
・1934(昭和9年)8月 東京生まれ
・1992(平成4年)3月 詩集「仮面中毒」上梓
◇詩空間は「青年」の発信広場。すこし齢を重ねましたが、私の「青年」はいま真っ盛りです。
◇私は敗戦後70年を遍歴した者として、身近にこぼれた諸現象を、腰を屈めてたぐっていきたいと考えています。

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