ある晩年
雨
止むことのない雨
豪雨になって
やっと だった
渾身 願い 祈り
やっと
夫を永遠の旅路へと送り出し
彼女も 決然と徘徊の旅に出た
ここはどこ?
わたしは?
出口は?
今日も また
あすも また
夕焼け はるか
晩鐘が そっと
余韻を乗せて漕ぎ寄せてくる
胸に両手を合わせる と
全身に万感の潮が満ちてきた
喜びの
悲しみの
あのとき あの頃
だれでも独り ホームレス
彼女は シワだらけの心身を拭って
安堵の波間に
裸身をゆったり ゆったりと横たえた
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後始末
汚染水 海へ
汚染土 裏庭へ
大気汚染 風まかせ
住民 バラバラに
*
あれだけの大災害
二度とあるわけないよ ないよう
明日の安全よりも 何よりも
今日の経済だよ だよう
*
町ぐるみの避難
ようやく ようやく解除
帰ったら 「町」はなかった
*
耕せる土地なし 雇用なし
医者なし 商店なし
若者も なし
転げた墓石 あり多数
*
学校の和式便所はイヤ
娘 我慢ガマンで 家へ駆け込んだが
大人たち
トイレのないマンションの設計に夢中
*
核廃棄物は
地中深く ふかく 深く
十万年間 二十万年間…
どうぞ どうぞ
地上にはもう ヒトは居ないから
こども難民
ねぇ
ぼく だれの子?
まえの?
いまの?
おい かくれんぼしよう
ま~だ だよ~う だよ~
そのまま
父親は はるか遠くへと消えてしまった
今度来る父ちゃん
いじめっ子じゃないよね ねっ
ぼくにも
母ちゃんにも
お前
母ちゃんと一緒に居たかったら
もっと しっかり万引きして来な
夜が明けちゃうよ みんな
親に叱られないの?
大丈夫
帰らなくても
スマホ持たされているから