廃屋


歳月を齧るうちに
脳みそも一緒に頬ばってしまった

占いをし過ぎて
水晶玉も混濁してしまった
天国が逆さまに霞んで見える

泣けるかどうか 鏡に泣いてみる

肋骨に蔦がからまっている
掻き分けて覗きこむと
こころざしが
満帆のまま錨を下ろしている
(なんだ そこに居たのか)

わだかまりが腫れて
掻けば掻くほど
あ 剥がれてしまった
目玉が 頭髪が…

ころげ落ちた頭蓋の広場で
大観衆が
床を踏み鳴らしてゴスペルを歌っている

庭師を呼んでくれ
脳細胞を剪定してくれ
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大富豪


家に帰ろうとして
道に迷ってしまった
たしか
こんな一本杉の原っぱがあった
小川に沿ったあんな小径がつづいていた
けれど ぼくの大邸宅が見つからない

シャンデリアの下で
ほくそ笑みながら
金貨を数える毎日だった

やっと
どでかい寝ぐらにたどり着いた
ぼくの庭のあちこちで
デートするカップルたち
東京スカイツリーもそびえている

あゝ
夏の夜の爽やかなそよ風よ

星空に
精一杯のくしゃみをする

金貨が 金貨が 金貨が
滝になって降ってきた

なにもかもが ぼくの独り占め
ダンボールだっていくらでも
ダンボールなんていくらでも

昔も今も


畜生!
玉砕という美名のもとに
どうして おれだけ生き残ったのだ

おれの位牌の前で
妻は再婚
もう 心中する相手が居なくなっていた

空中浮遊ができる という髭男が
しきりにマントラを脱糞していた その頃

悪いのはわたしです と
破綻会社の社長は詫びたが
路頭に迷った人 二万人

離婚訴訟の紙吹雪
傷つけあう相手ばかりになった

屋上から飛び降りる どうしても
という女がいた
代りに飛び降りてやった ら
通行人を殺してしまった

誰でもいい
殺人と自殺を同時にやるんだ どうしても
という男がいた
おお 神よ
乾いた音がして
薬きょうと一緒に男が弾け飛んだ

簡易宿泊所の二段べッドで
ひたすら祈りを捧げている老人がいた
月面に立ったこともある という人だ
プロフィール

toruta

Author:toruta
・1934(昭和9年)8月 東京生まれ
・1992(平成4年)3月 詩集「仮面中毒」上梓
◇詩空間は「青年」の発信広場。すこし齢を重ねましたが、私の「青年」はいま真っ盛りです。
◇私は敗戦後70年を遍歴した者として、身近にこぼれた諸現象を、腰を屈めてたぐっていきたいと考えています。

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