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熱い西瓜


すいかを買ってきた
持つと やけに暖かい
地球温暖化のせいかも

冷蔵庫で冷やそうと
包丁を入れると
あっ 赤い熱湯がほとばしり出た

そうか
待っていたのか

終ることのない世界の紛争で
理不尽に殺戮された人々の血が
訴えるこのときを 待っていたのか

この血まみれの地中から
この小さな球形へ
吸い上げ 圧しこめた熱い怨念の
世に問うときを 待っていたのか

地球を掘る
みんなで深く 深く掘って
丸ごと 丁重に埋めた
爽やかな味覚の すいかの再生を願って
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体臭


月の砂漠の真っただ中で
野営をしていると
砂漠が 
らくだに乗ってぼくを跨いでいる

本当かどうか
自分の体臭を嗅いでみた
やはり
ぼくは らくだに乗った砂漠だった

彼岸の午後

孫が久しぶりに訪ねてきた
仏壇に線香を手向けると すぐ
スマフォに両目を埋めこみはじめた

なにもしゃべらない
なにも食べない
なにも…

あ 孫がいない
スマフォだけが テーブルの上に坐っている
その大きな口を思いきり開けて

たなびく線香の煙になって
空白の時が なにごともなく流れている

傲慢だけが

赤字まみれの家が激しく燃えている
燃えきれない一家が
債務を抱えたまゝころげ出てきた

消火のさなか
太った熱帯魚たちが
われ勝ちに 水草の株をついばんでいる

荒涼が吹き抜ける路地裏
悲嘆でずぶ濡れのその一家が
当てもなく さ迷っている と

おい こら 
生存許可証を提示せよ

腹を満たせば 無銭罪 
個人的自衛権を行使すれば 妨害罪
ふて寝をすれば 浮浪罪

たどり着いた収容所
朝から行き倒れの搬入がつづく
夜は夜で 歯ぎしりの大合唱

個人と個人 国家と国家の間でも
ますます拡がる隔たりに
傲慢だけが棲みついて

おい こら
生存許可証を提示せよ

悲憤の燃え殻が 
いたるところで くすぶっている



プロフィール

toruta

Author:toruta
・1934(昭和9年)8月 東京生まれ
・1992(平成4年)3月 詩集「仮面中毒」上梓
◇詩空間は「青年」の発信広場。すこし齢を重ねましたが、私の「青年」はいま真っ盛りです。
◇私は敗戦後70年を遍歴した者として、身近にこぼれた諸現象を、腰を屈めてたぐっていきたいと考えています。

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