強制執行
深夜 激しいノックの音がした
宅配便だろうか
峨が一匹 玄関に落ちていた
ひそやかに内臓に飼っていた小虫が
春秋を喰い散らかして
がぜん 病院へ行けと強要しはじめた
病人 ぞくぞく
遺体 つぎつぎ
見舞い客・客が観光バス・バスで駆けつける
ご先祖代々への伝言 山ほど抱えて
あれぇ? 医師が深々とこうべを垂れた
家族が手分けして走り出した
(おいおい おれはまだ…)
恐れるな 怖がるな
この世に生れ落ちたとたん
だれでも あの世ゆきを予約したのだから
式典ぼそぼそ
あの世に先着した男が 自分の生中継を見入っている
鼻毛を何本も抜きながら
宅配便だろうか
峨が一匹 玄関に落ちていた
ひそやかに内臓に飼っていた小虫が
春秋を喰い散らかして
がぜん 病院へ行けと強要しはじめた
病人 ぞくぞく
遺体 つぎつぎ
見舞い客・客が観光バス・バスで駆けつける
ご先祖代々への伝言 山ほど抱えて
あれぇ? 医師が深々とこうべを垂れた
家族が手分けして走り出した
(おいおい おれはまだ…)
恐れるな 怖がるな
この世に生れ落ちたとたん
だれでも あの世ゆきを予約したのだから
式典ぼそぼそ
あの世に先着した男が 自分の生中継を見入っている
鼻毛を何本も抜きながら
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冬いろ
だれが雪を白いろときめたのか
雪は雪いろ
盲目の少女の瞳に降りしきる小雪
萎えた眼窩(がんか)に小指を遊ばせながら
彼女は冬を耐えた
だれが恋をバラ色とよんだのか
恋は恋いろ
見知らぬ王子への愛を書き上げたころ
季節めぐりてまた冬がきて
木枯らし広場に一人 とり残された彼女
とめどなく降りかかる失意をぬぐって
ようやく迎えた静謐のひととき
少女は陽だまりにうずくまり
あすの小指に
爪いろのマニュキアを塗りはじめる
雪は雪いろ
盲目の少女の瞳に降りしきる小雪
萎えた眼窩(がんか)に小指を遊ばせながら
彼女は冬を耐えた
だれが恋をバラ色とよんだのか
恋は恋いろ
見知らぬ王子への愛を書き上げたころ
季節めぐりてまた冬がきて
木枯らし広場に一人 とり残された彼女
とめどなく降りかかる失意をぬぐって
ようやく迎えた静謐のひととき
少女は陽だまりにうずくまり
あすの小指に
爪いろのマニュキアを塗りはじめる