絶海の村


この村は地図には載っていなかった
海岸線も 村人も
刻々と寸法を変えてしまうから

たそがれの輪郭をした男に道を尋ねた
真っすぐ行きなっせぇ
どこまでも真っすぐ行きなつせぇ

断崖を覗きこんで
ためらっている人がいた
乳飲み子を抱いた病める母親

太陽がこなごなに砕けてできた
三角波の家並
指に水掻きをつけた村人が
そぞろ歩いている

茜色の水平線をめざして
夕波を掻き分け 掻き分け
巡礼の長い列が行く
先頭から
順に
熔けていく

かもめの群れが
急降下をくり返している

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海のふところ

夕陽を摘んでくる と
宇宙船つくりに没頭していた少年が
ふいに 丘を駆けおりていった

ドラが ドラが鳴る
船と波止場に間隔が割りこんでくる
さらば
夜尿症よ 赤面癖よ

夜空が割れて 南十字星が堕ちてきた

半鐘が喚きだす
船が関節痛に呻吟する
荒波と同じ高さの咆哮が 咆哮が
荒波と同じ数の慟哭が 慟哭が

波間にただよっている あれは
偽名だらけの乗船名簿

波をはがすと
海底に打ち捨てられた遊園地
宇宙船コースターが音もなく走っている

夕陽を孕んだ母が
少年に添い寝して 浜辺の歌をうたっている

テーマ :
ジャンル : 小説・文学

同伴者

ぼくの体積に収めきれなくなったものが
外へ 外へと生えてくる
切っても切っても 生えてくる

波打ちぎわで転げている あれは
格闘のすえ
ぼくが放り投げたお前だ

返り血を夕陽で洗い流すと
海一面が茜色に染まった

これでよしと 立ち上がる

背中の継ぎ目からまた生えてくる

ぼくが逃げると一緒に駆けた
ぼくが嘆くと一緒に泣いた

風呂敷に包んで持ち歩く
はてな と
結び目から様子をうかがうお前
たがいに不審を投げかけながら
そわそわと 
プロフィール

toruta

Author:toruta
・1934(昭和9年)8月 東京生まれ
・1992(平成4年)3月 詩集「仮面中毒」上梓
◇詩空間は「青年」の発信広場。すこし齢を重ねましたが、私の「青年」はいま真っ盛りです。
◇私は敗戦後70年を遍歴した者として、身近にこぼれた諸現象を、腰を屈めてたぐっていきたいと考えています。

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