のどかさこそ


矢継ぎ早に発表される超技術
そのたびに
人々はどよめき
人類の叡智を自賛しあう

磁力で車体を浮かせたまゝ
全長280キロを
時速500キロ 40分で駆け抜ける
これぞ夢の超技術

だが リニア・カーよ
地に足も着けずに
そんなに急いで どうするの?
そこだけ時間を稼いでも

日本一美しい南アルプスの山々
その内臓をくり抜いて
250キロのトンネルをめぐらせる
乗客はもっぱら
絶景の 内側の 暗黒を楽しむ

難工事が待ち受けている
固い地盤 ほとばしる地下水
掘削土を運ぶ千台ものダンプカーが
山裾を数珠つなぎで爆走する
景観が マスクを着けて顔をそむけている

過剰な「利益」に追い立てられて
みるみる劣化していく大自然
次から次と
重なるスピードに支配されて
人たる生活を減退させていく人々

渾身の気合を込めて
山々に共存のエールを送った
その声が
森を越え 湖を越え
南アルプスの山々へ
のどかに
の ど か に伝播していった


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園丁の旅


かつては果樹園の園丁だった
肥沃な土地をはぐくみ
たわわな実りを
青空いっぱいに散りばめる
幸せな日々を送っていた

自然の劣化が加速して
どもりのコオロギが
隙間風のように啼きはじめた

山裾の豊かな草地に
のどかな時間を食む
放し飼いされた羊の群れ
その一匹になって 旅を重ねた

安らぎの懐を探し当てた
懐かしい寓話が霧となって流れる森だ
樹々の幹から
小鳥たちのさえずりが湧き出ている

大地に両脚を植えた
こうして 日向ぼっこをしながら
待っていよう
こうして 森の摂理を呼吸しながら
待っていよう

両脚に 根が生えるまで
両腕に 抱えきれない果実が実るまで

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顔の雑草


人の顔は 狭いながらも大自然の裏庭だ
手入れを怠ると
それっ とばかりに雑草が繁茂する

人はだれでも 
剃っても 剃っても
剃りきれない古傷を 
髭の根元に秘めている 
それが 絶え間もなく雑草を発芽させるのだ

加齢とともに
髭の伸びが加速しだした
わたしの余命を察知して
がぜん
わたしと一緒に
命の末をまっとうするつもりなのか

そろそろ 
閻魔がわたしを盗みにやってくる
髭を丹念に剃り落として
半世紀も前のわたしの
男前を鏡に残しておこう

古傷は寝かしつけよ
ねんごろに子守歌を聴かせつづけよ

時間がよどみはじめて
古い掛け時計が ふっと停まった
鏡には 雑草が繁茂した裏庭が
 

ゴリラのひと声(改)


ゴリラが背伸びして
こちらを覗きながらドラ声を発した
ついに 地球が痙攣を起こしてしまった

大津波が
人々を 村々を 陸を海を 呑みつくし
原発が
人々を 村々を 陸を海を 汚染しつくした

起て! 世界の生き物よ
種の発生以来 寡黙を貫いてきたゴリラだが
緊急発信した
おれたち 行動すべきときがきた

訥(とつ)弁のひと声こそ

壊滅した原子力発電所
その中で
養殖された大量のホタルによって
家々の居間に明かりが灯った

汚染に追われたクジラが
大挙して寄港してきた
その腹に避難していた村人を乗せて

村の樹々に小鳥の声が芽吹いてきた

ゼンマイ仕掛けのオスプレイが
子どもらに追われて
枝から枝へ 飛び回っている

平穏が驟雨となって降り注ぐなか
「神を恐れよ」 と
ゴリラ 最後のだみ声を残して
もとの密林へと還っていった
プロフィール

toruta

Author:toruta
・1934(昭和9年)8月 東京生まれ
・1992(平成4年)3月 詩集「仮面中毒」上梓
◇詩空間は「青年」の発信広場。すこし齢を重ねましたが、私の「青年」はいま真っ盛りです。
◇私は敗戦後70年を遍歴した者として、身近にこぼれた諸現象を、腰を屈めてたぐっていきたいと考えています。

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