愛国者


許せない
世界第2位なった経済力が
オリンピックのメダル獲得数が
有人宇宙船の打ち上げ成功が
シルクロードを通る通称圏の大構想が
国産空母の完成が
超高濃度のスモッグが
黄沙が  

それら
日本を越えることが 許せない
スポンサーサイト

水族館


ぶ厚いガラスで守られた楽天地
小魚の群れを率いて
天下のおきてを決める擬似まぐろが
平然と
おきてを犯し
処罰の網をするり するりと
すり抜けて

病院の生けすで
悠々と
泳いだり 寝ころんだりの1か月  

みそぎが明けた として
今日もまた
群れを従え
抜け穴だらけのおきてを決めている

じわりじわり


夕焼けに映える九条という大橋
弁慶が振りまわす長刀に
老いた義経だけでは
かわしきれなくなった

遠巻きする町衆の関心事は もっぱら
今日の
明日の
自分の
損得ばかり

刀剣狩りは あと一本で千本だ
この驕慢を謝らせる
若き義経よ いずこ

今日が
じわ じわ じわ
夕闇に馴染んでいく

仲間割れ


かつては中間所得層だった 
はずの
新・弱者たち
弱者の集団の一員となって
街ゆく現・中間所得層に 
屈辱の石を投げつけている
プライドのこぶしを振り上げて

三ツ星レストラン
豪華な食器に
優美に盛りつけられた極上らしい[?]

かつては中間所得層だった
はずの
新・富裕層たち
したり顔して
極上らしい「?」に舌鼓をうっている
ガラス越しの
街ゆく現・中間所得層をあざけりながら

失態


チンパンジーは おそらく
起源以来 ずっと
生命の大義を主張したかった

なのに
神はなぜ
彼らに言葉を与えなかったのか

ヒトは言葉を持ちながら
それを
もっぱら 非難 侮蔑 饒舌
もしくは 迎合に使うばかり

なのに
神はなぜ
ヒトに言葉を与えてしまったのか

チンパンジーは
遠い親戚=ヒトの不作為を恥じて
偽の言葉がない
ジャングルの奥地へこもってしまった

災難いくらでも



 ・交通が…意表をついて やってくる
 ・医療が…隠されたまま やってくる
 ・捜索が…声掛け合うと やってくる
 ・原発が…やってきた
        その後にも やってくる    

時を求めて


日々 加速する暮らしのスピード
テレビでも
CMやバラエティなどを
倍速で けたたましく流している

時流に刃向かって
仕事をおれ流に減速したら
たちまち
人生から振り落とされてしまった

味わってみたい 
野を駆けて蝶を追う一日を
味わってみたい 
熟睡のさ中の豊穣な時を

おれは いま
時代に勘当された あの
中古時計の
本当の時間を買い漁って
着々と
押入れに貯め込んでいる
(人に言うなよ)

棲み家


古い住宅街
空き家が あち こち
朽ちた屋根に
雑草が根を張っている

元の住民一家
わが家の屋根に
根を張って

あっ 流れ星だぁ と末娘
ひとつ また一つ
さっと走って さっと消えた

今夜も
はるか
はるかに遠い 遠い
ふるさとを目指す人たちが 

雲 流れて


ゆるやかに
里の暮らしを見下ろして
ゆったり
ゆったりと思索しながら
むかしの雲は
散歩を楽しんでいた

時々刻々
はるかなる宇宙から
つぶさに
つぶさに査察されて
いまの雲は
気配りしながら浮いている

見あげたら
わずかに見える空のもと
いつも
いつでもカメラに見張られて
街路を流れる人々は
自分の居場所を尋ねている

マスク族


雑菌とも
スモッグとも
人間とも
関わりを拒んで
みんな どこへ?

口をつぐみ
鼻をつまみ
両手を隠して
目だけをぎらつかせ

どこへ?
脇目もふらずに 行進していく

動物愛護


あらゆる動物の淘汰が進んでいる
その最大の天敵が人間だ
人間ばかりが増殖を重ねて
人間が 人間の天敵になってしまった

目を覆う殺戮のすさまじさ

生き残りの動物たちが
草葉の陰から これを見かねて
恐る恐る
神に申し出た
急を要します 
ぜひ 人間愛護法の制定を と 

へいわ


あの町にも この村にも
平和公園 平和商店街
平和通り 平和商事…
海外派兵にまで転用されて

もう いい加減にしてよ
音声だけの「へいわ」

哀れ 
せっかく
膨大な犠牲を払って
訪れてくれた平和が
本意を剥がされ 失意を抱えて
はるかなる故郷へ旅立とうとしている

落着


今日が終った
この一日 何のためにあったのか
(振り向くな 明日が生きられなくなる)

夜は
今日と明日の狭間にひそむ密室
ひとりベットに横たわると
そのまま 逝ってしまいそうになる
しばし 不安相手の枕投げ

掛け時計が か細くなった

しっ! ようやく
睡眠と 猛烈に合体できそうなのだ

昨夜は 闇の中で小さく死んだ
今日一日 新しい人生が送れる




美しい庭


美しい庭造りに生きた父が
一昨年 百才で逝ってしまった

庭に四季が紛れ込んできて
樹木が
四方八方に枝を伸ばし
蜘蛛が 賓客の訪れを待ち構えている
枝から枝へ 網を張り巡らせて

草叢になった庭地を
蝶々が 自在に飛び回りながら
秋虫が 美声を競い合いながら
しきりに
自然の懐に遺言を産みつけている

父の遺した美しい庭が
刻々と
美しい元の繁茂地へと還っていく

(父は いつまで生きるつもりだったのだろう)

走っても走っても



妊婦たちが懸命に走っている
生まれ来る子の
保育園の予約を取るために 

幼児たちが懸命に走っている
派遣社員の母に代わって
時間内に出勤するために

大通りでは
認知症の集団が
口々に大声をあげている
早くおば捨て山を造って!

便意 乱れて


ぼくらの尻に
絶えず 挿入される座薬は
「貯蓄から投資へ」
(溜めるな 排泄せよ)と

株が上がる
山っ気が舞い上がる
背丈いっぱい
たぐりたぐられ

突然 うろうろ
暴落 くよくよ

僕らの悲劇が大チャンス
世界の強欲 せめぎ合い 
高値へ持ち上げて 売り抜ける
天と地が
劇的に広がっていく

麻痺する世界の便意
もう もう
限界が

はかない欲望
垂れ 流して
ゆとりの消化力 帰ってくる

逝く夏


蝉時雨に包まれて
われ独り

合唱
ぴたりと止んで

ひとしきりの雷雨

森 神苑に還る
われ 霞となって漂う 

閉じない眼


活気づく魚市場
底引き漁で囚われた秋刀魚が
揚げられ 運ばれ
夕餉で 骨になるまでを
じっと 見つめている

この星から消される
その道のりを
瞬きもせず
ずっと 見つめている

幕下りて


定年まで あと数年
突然の解雇
時代の流れだ と言い立てられて

運河の流れ 濁流
去り行く者の感懐が
暗渠へと落下していく

どさくさだったなぁ 
益こそすべてのグローバル化
従業員は 非正規で
もの造りは 途上国で
技術は 企業買収で
儲けは 別金庫へ

脳裏に去来する  忘れがたき群像
小さな成果も評価してくれた顧客たち
ささいな失態に涙しあった仲間たち
尽きることのない 回顧  

夜が更けても まだ  
夜が明けても なお
陽がのぼれば また
次の時代の幕が上がるまで

心待ち


いよいよ明日は
あの
うっとうしい情報が
いっさい遮断される日

虚言 強弁 おっとぼけ
収賄 隠蔽 しらばっくれ
介護 虐待 ほっかぶり

明日は いよいよ
月一回の新聞休刊日
心の安らぎ 取り戻す日

新聞なんか
読むなと言うけれど
 

虚報(うそ)


ようやく だった
国は虚報症を患ったまま
避難指示を解除しはじめた

帰れない
帰らない
帰りたくない
絡み合う住民の不信と不安
そのままに

そのままに
原発再稼動のたくらみが
虚報患者によって進められていた
近視眼で
計算機だけを叩き合って

住民の避難ままならぬまま
トイレのないマンションばかりが建っていく

ぬかるみ道


足を取られて
手をとりあって
もう少しだよ
ゴールまで もう少し

近いと思えば近くなる

もう少しだよ もう少し
だけど
なかなか だなぁ
なかなか
老と老

いじめっ子


この町の教育委員会は
頻発する「いじめ」対策として
生徒たちの意見を聴取した

《わたしたちの
僕たちの
先生ばかりを いじめないでください》

委員長は
各学校長に
教師へのさらなる指導強化を要請した


あの日


とっぷりと暮れた
ゴミ捨て場のある裏路地
ようやく「非正規」に就職した娘が
家路を急ぐ
初給与で買ったケーキを提げて

暗闇のなかの
捨てられた数台のテレビ
音もなく
エンドレスで
モノクロ画像を垂れ流している
凄惨な沖縄戦の実録

40ワットの電灯のもと
親子三人
時給一時間分を味わっている
重い記憶を辿りながら

あの日 六月二十三日
すべてを失い 終った日
新たな苦難が はじまった日
ほとんどの日本人が 忘れ去った日

どこまで?


制作ラインに
新たに据えられたI.T機
そのスピードに追われる
俺たちの作業

やっと慣れた
とたん だ
次の新鋭機が到着して
次なるスピードへ

次から 次へと
職場が
代替システムに支配されていく
仕事仲間が消えていく
ヒトのわざが消えて いく

いくら苦しくても
マラソン選手がうらやましい
めざすゴールが待っている

唯一の解


計算問題の解を二つ書いて
受験に失敗した彼
何ごとも 解は一つと心得てしまった

先の大戦の
迫りくる敗戦の局面で
彼がとった解が ただ一つ
本土上陸までの時間稼ぎ
住民を盾に
沖縄を捨て石にする こと
二十万人の いのちを捨てさせて

《これまで
この国の一員として
ふさわしい扱いがあっただろうか
たとえ束の間でも》

地球上 唯一の
悪魔の 狂気を投下した国の 彼と
投下された国の 彼
その彼と彼が
結託して
さんざん蹂躙した沖縄に
さらなる解を強要している
「唯一の」 「唯一の」 と裏声を響かせながら

《とにかく 埋め立てさえしてしまえば》と


かたくなに
海ばかりを視つめて
けんけん がくがく
津波対策が決まった

コンクリート壁の
かさ上げ 最大に
延伸も 最大に
どんなに費用がかかっても

ひとたび 決まったからには
ひとたび 着手したからには
たとえ シロアリどもがダンゴに寄ってたかっても

視界から 海原が消えた
民の暮らしが消えた 

平地を捨てて 裏山へ
郷土を捨てて 避難先へ 

いざ!


紺碧の空
自在に飛び交う鳥たちよ

ライト兄弟の試行が
大空いっぱいに膨らんで
ついに 
はるか 神の領域まで飛翔した

そのさなか
地上の 神と神と 人と人
そそのかし
そそのかされて
いがみ合い
殺し合い

はびこる野蛮
毀れる郷土

われら みな
神と神をそのままに
脱出策を膨らませている
神の領域へ
着々と

スマホ万歳Ⅲ


 (あれれ?)

スマホゲームに血眼になり過ぎて
視力を紛失してしまった孫が
あれ?
スマホと一緒
トイレに駆け込んだまま
まだ 出てこない

便意を捨てて
便器に坐って
スマホの中の 視力を探して

失われた希少金属の
鉱脈を発見したらしい
旧石器時代に捨てられたスマホの山を

ゲームに迷い込んでいた

 

スマホ万歳(Ⅱ)


(究極の楽しみ方)

通勤電車の乗客が
一斉に
スマホに時間を注いでいる
人生の
消耗戦に没頭しているのだ

めりめりと
大切な残り時間が
縮む 縮んでゆく
そうした楽しみ方も
また よし

だが
たまには目線を上げて
世界の覇権争いにも
参加したらどうだろう
際限のない
各国のトリックゲーム

刻々と
破滅してゆく世界に
遭遇できる
この恐怖を
手に汗して楽しめるハズだ
 

それ行け どんどん


立て続けに打ち揚がる
魂胆のアドバルーン
ゆらり ゆらり
日本列島が
雨天に揺れていた

法の道理 民の疑念に
猫かぶり はぐらかし
あげくの果ての蛮行で
いつもと同じ 台本どうりに

輪転機も 電波も
公平中立の建て前で
ものも申さず
淡々と

列島が
積極平和の
虚空高くへ舞い上がっていく
知らぬ間に
どんどん と

双子鬼


指先ひとつ
無人機で追跡
自分のいのちを晒さずに 大殺戮
ゲーム感覚で

身も心も一つに束ねて
人混みの真っ只中へ
自分のいのちを潰して 大殺戮
一途に
偉大なる神のみもとへ

スマホ 万歳


(ながら川)
なにがそんなに楽しいのか
歩きながら 大声で
自分の耳と話しながら 
人が流れていく

なにをそんなに悩んでいるのか
歩きながら 人とぶつかっても
深々とうなだれながら 
人が流れ 流れていく

相関図Ⅱ


(平等法)
女性はもっぱら男の子を
男性はもっぱら 
女の子を 産むことになった

(品定め)
蝶は華麗なダンスで
さんざん気を惹いたあげく
急旋回
未踏の奥地へ飛んでいってしまった

(雲行き)
気をつけろ
暗闇に潜んでいる嫉妬が
朝の扉が開くのを じっと待っている

(もしも)
妻の連射するグチに
重度のうつ病に罹ってしまった
おれを 厨房に入れないでくれ
そこには刃物が揃っている

(予測外)
見事 高層マンションを入手したお二人
だったが
突然の三角関係の大揺れで
彼は妻を突き落とし
見事 自分も転落を果たした

(寿)
海辺で朝餉をとる老夫妻
銅鑼を鳴らして遠ざかる
幾歳月のあれこれを
ゆらり ゆらりと味わっている
 

突風吹いて


人は 記憶の狭間に
なんと多くの悔恨を
置き去りにして来たことか
時として
彼らが突風となって
人々の背を叩きつづける

ならば よし
記憶のあちこちに罠を仕掛けて
一網打尽
生け捕ってしまおう

採集された悔恨たち
隙間だらけの謙遜ごっこ
渦巻いたり
増殖し合って
吹き溜まったり

とっぷりと暮れゆく街角
悔恨たちを満載した突風が
次々と
記憶の国境から吹き出ていく

新たな悔恨を抱えた人々を
置き去りにして

相関図(男と女)


(本音)
男性は
女性が好きだが おんなは嫌いだ
女性は
おとこの腕力を頼るが
男性の資力こそが大好きだ

(リセット法)
男は 森の土中深く女を寝かしつける
女は
偽の妊娠を告げて 他の男のもとに走る

(勘違い)
あなたは
間違いなくあなた なのに
わたしは
あなた無しでは わたしではない

(平穏)
彼女が
沈黙を相手に しゃべり続けている
その間
彼氏は 耳にタコを栽培している

(無常)
熟柿を一つだけ遺して
最後の朽ち葉が ぽとりと落ちた

のどかさこそ


矢継ぎ早に発表される超技術
そのたびに
人々はどよめき
人類の叡智を自賛しあう

磁力で車体を浮かせたまゝ
全長280キロを
時速500キロ 40分で駆け抜ける
これぞ夢の超技術

だが リニア・カーよ
地に足も着けずに
そんなに急いで どうするの?
そこだけ時間を稼いでも

日本一美しい南アルプスの山々
その内臓をくり抜いて
250キロのトンネルをめぐらせる
乗客はもっぱら
絶景の 内側の 暗黒を楽しむ

難工事が待ち受けている
固い地盤 ほとばしる地下水
掘削土を運ぶ千台ものダンプカーが
山裾を数珠つなぎで爆走する
景観が マスクを着けて顔をそむけている

過剰な「利益」に追い立てられて
みるみる劣化していく大自然
次から次と
重なるスピードに支配されて
人たる生活を減退させていく人々

渾身の気合を込めて
山々に共存のエールを送った
その声が
森を越え 湖を越え
南アルプスの山々へ
のどかに
の ど か に伝播していった


靴音


靴が歩く
路傍の野草を踏みしめながら
苦渋の調べを軋ませながら

流浪の悶えを
おんぼろ靴に詰め込んだギタリストよ
心に響くあなたの爪弾き
悶えれば悶えるほど芳醇

アンコールはいかが?
アンコールは?
けれども
黄昏が急速に閉じてしまって

肩をすぼめて
行きずりの靴たちが
夕闇方面へ遠のいてゆく
苦渋の調べに合わせながら
もの悲しく すり減りながら 

結局


「抑止力」と称する
名画のオークション
ハラの探りあい
虚勢のぶつかり合い

際限もなく値が吊り上がって
「挑発力」 で落札されてしまった

対策


許さない!
屈しない!
断固戦う! などなど

箇条書きの
勇猛な言葉 だけが
ごった返している

どうする?

血気の強行採決
「もぐら叩き」に専念せよ
一億総活躍で

母への挽歌


急を聞いて駆けつけた 永い闘病だった。
母は部品ごとに分解されて 病室に展げられて
いた。優しかったその眼孔は 自分の涙で融け
てしまっていた。
母を引きとった僕は 蘇生させようと 部品の組
み立てに熱中した

母は締りのない蛇口だった。僕に基準値を超え
た愛をつぎ込んだ。かと思うと 凪(なぎ)と時化
(しけ)が交互に発生する港だった。
予告のない叱責がガラス窓を破って飛んできて
何度も僕に失禁させた。

この暑さのなか 裸の女性がブランコに揺られて
いた。そのとき 突かれたように母の豊かな乳房
を思った。なぜかそれは いつも湿っていた。

母は夜行性の動物だった。毎夜 遅くまで家事や
内職に忙殺されていた。 そのあげく僕を宿した。
僕がイリオモテヤマネコを懐かしく思うのは そこ
に母を見るからだった。

結局 母を蘇生できなかったが 追想を秘めた部
品は 僕自身に移植した。だから 母を荼毘にふ
して以来 僕らはずっと 共に生きている。

「影」の魔力


きらめくネオンに酔った帰り道
気づかぬまま
長々と延びる影に
たぐられてしまった
山裾へ 森の奥へと

影を踏む そのたびに
自分の影が背後に消えて
薄くなりながら従いていく

大地のツボに耳を当てつつ
慎重に 一歩 一歩
秘密のゾーンに近づいていく影

そこで
かぐや姫を夢見る白い乙女たち
射し込む月のかけらを
宝石箱に集めて培養している
老婆になったのも気づかぬまま

そこに 押しこまれた行方不明の人たち
失った各自の影を頼りに
この先 いかに生きるべきか
または いかに逝くべきか
毎日 毎時 毎秒
討論をつづけている
過ぎゆく世紀を忘れ果てて

煌々と冴え渡る月光が
森の体温を奪っていく
徐々に
影の魔力をいっそう濃くしながら

合唱団の歌唱力


優美な海岸線に
傲然と居座る原発群
「安全だよ 安全だよ」 と
歌い上げる合唱団に誘われて
続々と 列島の海辺に配置された

突如 2011年3月 フクシマ原発
技術の神から苛烈な審判が下された

汚染地を捨てて 逃避する住民15万人
遠くへ 遠くへと 見失った明日を探しに

それでも 合唱団
「原発は もう大丈夫
世界でいちばん厳しい基準ができてから」
核の危険性がなくなった?
住民の避難対策は? テロへの対応は?

それでも 合唱団
「原発がいちばん安上がりだよ
稼動させないと電気代がハネ上るよ」
どうする
廃棄物や使用済み燃料の処理費用を
貯まった原爆6千発分のプルトニュームを

それでも 合唱団
「なによりも 目先の経済が第一 第一だ」 と
その歌唱が
国民の隙間を縫って広がっていく
必須問題は 棚上げ 先送り
ままならぬ廃炉処理もさて置いて

合唱団が国の専属で 
国が合唱団の専属で
合唱が終章に近づくにつれ
原発再稼動の認可が着々と進んでいく

時代の傾き


定年退職して
過ぎた日の回顧に没入していたら
出しそびれていた恋文が出てきた
初恋の少女への

あの頃の 貧しいさなかの純情
あの頃の 世情への一途な行動
あの頃の…

妻が
時代を盆に載せて入ってきた
「きのうは珍しく
殺人事件が一件もなかったわ」
なぜだろう それが不安だ

テレビを点ける と
近隣国の旅行者の爆買い
ヘイトスピーチの愛国者たちが
作り笑いの仮面を被って
揉み手しながら お客様をお迎えしている

背広姿の年寄りが3人
ハゲ頭を晒して
おれたちに しきりに謝っている
顔ぶれを替えて
繰り返される定番の映像だ

鼻先の結果を焦った者たちが
人倫をかなぐり捨てて
我勝ちに 駆け抜けようとしている
この奇態の時代を



「婦」


朝な夕な
共に
幸せを編んできた夫婦だった

粗雑な時代に阻まれて
身も 心も 財も
徐々に 劣化していった

国の標準世帯は
『夫婦と子ども二人』だが
「夫」と「子ども二人」が脱落して
「婦」だけが…

「婦」だけの単身世帯が
この国の標準となって
全国が
老いの分布図に染められていく

やがて
納期が 迫ってきた
たおやかに夫と編んだ歩みが
毛糸玉に戻ってしまう
彼女自身の納期が

泰然と
今日も 彼女は
「今日」を編みつづけている
夫と過ごした春秋を
ひと目 ひと目
追憶を込めて 絡めながら

黒衣の者


誰だろう
幾千の兵を無為に死なせた
あの 幾つもの惨憺たる「全滅」を
美しい「玉砕」と言いつくろった奴は

誰だろう
巨万の民と財を消耗しつくした
あの みじめな「敗戦」を
負けを意味しない「終戦」と言い換えた奴は

誰だろう
史上最悪の犯罪で壊滅した地を
「平和」を記念する公園に豹変させて
凄惨な過去を希釈してしまった奴は

「安らかに眠ってください
過ちは繰り返しませぬから」
と 無銘の文言を石碑に刻ませた奴は
誰だろう

「武器」を「防衛装備」へ
「輸出」を「移転」とすり替えて
人の殺し合いを
平然と 儲けのタネに仕立てた奴は
誰だろう

相変わらず 
「平和」とか「安全」とか
懐の深い言葉をまぶして 
ぼやかして
本音を力ずくで押し通した奴は
誰だろう

ある晩年



止むことのない雨
豪雨になって

やっと だった
渾身 願い 祈り
やっと 
夫を永遠の旅路へと送り出し
彼女も 決然と徘徊の旅に出た

ここはどこ?
わたしは?
出口は?

今日も また
あすも また

夕焼け はるか
晩鐘が そっと
余韻を乗せて漕ぎ寄せてくる
胸に両手を合わせる と
全身に万感の潮が満ちてきた

喜びの
悲しみの
あのとき あの頃

だれでも独り ホームレス

彼女は シワだらけの心身を拭って
安堵の波間に 
裸身をゆったり ゆったりと横たえた

後始末


汚染水 海へ
汚染土 裏庭へ
大気汚染 風まかせ
住民 バラバラに
   *
あれだけの大災害
二度とあるわけないよ ないよう
明日の安全よりも 何よりも
今日の経済だよ だよう
   *
町ぐるみの避難
ようやく ようやく解除
帰ったら 「町」はなかった
   *
耕せる土地なし 雇用なし
医者なし 商店なし
若者も なし
転げた墓石 あり多数 
   *
学校の和式便所はイヤ
娘 我慢ガマンで 家へ駆け込んだが
大人たち
トイレのないマンションの設計に夢中
   *
核廃棄物は
地中深く ふかく 深く
十万年間 二十万年間…
どうぞ どうぞ
地上にはもう ヒトは居ないから 

こども難民


ねぇ
ぼく だれの子?
まえの? 
いまの?

おい かくれんぼしよう  
ま~だ だよ~う だよ~
そのまま 
父親は はるか遠くへと消えてしまった
   
今度来る父ちゃん
いじめっ子じゃないよね ねっ
ぼくにも   
母ちゃんにも

お前
母ちゃんと一緒に居たかったら
もっと しっかり万引きして来な
     
夜が明けちゃうよ みんな
親に叱られないの?
大丈夫
帰らなくても
スマホ持たされているから

五輪狂想曲


アンダーコントロール とか
軽い冗談を
声高に断言してしまう恥ずかしさ
その後も 続々と

おもてなし とか
さりげなく控えめな この心遣いを
声高に宣伝してしまう恥ずかしさ
その後も 何度でも

三百億 あっ間違えた
三千億円 とか
さっそく 世界新記録を樹立してしまう恥ずかしさ
無責任体制の責任を
責任どうしで 押しつけあう恥ずかしさ
その後の体制 元のまま

あっ 似てる マネしてる とか
その後も 次々 次々と
はしゃぎ騒ぐメディアの恥ずかしさ
いいじやないか
古くからこの国の文化は
パクリで飛翔してきたのだから

プロフィール

toruta

Author:toruta
・1934(昭和9年)8月 東京生まれ
・1992(平成4年)3月 詩集「仮面中毒」上梓
◇詩空間は「青年」の発信広場。すこし齢を重ねましたが、私の「青年」はいま真っ盛りです。
◇私は敗戦後70年を遍歴した者として、身近にこぼれた諸現象を、腰を屈めてたぐっていきたいと考えています。

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